リネージュ日記
<話せる島の洞窟・象牙の塔の異変・失態は二度起きる>



 五代雄介氏と落ち合い、蟻の穴に潜った。狩り場に丁度良い穴を五代氏が知っているという。まずはシルバーナイトタウンで準備を整え、オアシスへ。そこから五代氏の案内に従い、歩いて蟻穴に向かった。蟻の穴は幾つもあり、狩りに良い穴を選ばなければいけないらしい。
 ところが案内役の五代氏は、ちょっと先に行って来ると言ったきり戻ってこない。しばし待っていると連絡が入った。いきなり迷子になったらしい。しょうがないので一度シルバーナイトタウンに戻って落ち合い、そこから出直しとなった。五代氏は慌てて地図を買っていた。先行き不安だ。
 再びオアシスを経由して蟻の穴へ。ようやく蟻の穴に到着し、穴に入る準備をしようとした時、ジャイアントアントが現れた。いつも砂漠を彷徨いている奴だ。更にスコーピオンもやってくる。五代氏がすかさず退治に向かい、あっという間に片付けた。……のだが、これが後から後から沸いてくる。まだ蟻穴に潜っていないと言うのに、周りから蟻が集まってくるのだ。おまけにスコーピオンも。ついにはバジリスクまで! 僕はバジリスクを見て慌てて逃げたのだけど、五代氏は躊躇することなくその懐に飛び込んだ。そしてバジリスクと対等に、いやそれ以上に渡り合い、一人で倒してしまったではないか。さすがというか何というか。僕は羨望の眼差しを送るしかない。当の五代氏は至極当然という雰囲気で、蟻の穴のチェックをしている。この人と一緒なら蟻穴もきっと大丈夫だ。頷いた僕に、五代氏は笑いながら振り返った。「ごめん。穴を間違えた」。

 五代氏の先導で蟻の穴の奥深くまで潜った。ここまで深い場所まで来たのは初めてだ。出てくる蟻は一緒だが、その数が多い。また最深部近くでは、あの怖いジャイアントアントソルジャーが何匹も一度に出てくることがある。さすがの五代氏も「一度に相手できるのは4匹までだな」と言っていた。それでも十分凄いのだけど。
 五代氏はもの凄い速さで穴の中を縦横無尽に走り回る。出会った蟻にすかさず一太刀二太刀。僕が到着する頃にはもう片付いていることがほとんどだ。僕に出来ることと言ったら、五代氏の邪魔にならないように大人しくしていることと、たまに回復魔法をかけるぐらいだ。それですら「大丈夫、大丈夫」と五代氏は笑っている。
 そうこうしているうちに、最下層までやってきた。もちろん僕は初めてだ。ここには女王蟻がいるという。僕は震え上がった。そんなのに出くわしたらひとたまりもない。でも五代氏がいうには、今は女王蟻は留守らしい。いつもいる訳ではないのだ。その代わり、女王が現れるという産卵場所に案内して貰った。暗闇の中、無数の白い卵が浮かび上がる。数はとても数えられない。壁にも天井にも、ぎっしりと卵が並んでいるのだ。あの卵の一つ一つから、新しい蟻がどんどん生まれるのだろう。成る程、狩っても狩っても蟻の数が減らないはずだ。
 それから、随分と長い間狩りを続けた。五代氏が強いというのもあるのだが、やはり二人だとリスクが分散するので、長く狩りが出来る。途中で休息を挟みながら、一体何匹の蟻を退治したことか。外に出ると日は明るかった。どうやら丸一日狩りをしていたようだ。

 最後に蟻穴での成果を分配してもらった。僕はさして役に立たなかったけど、手に入れた物は山分けということに。ここら辺りの蟻は、ルビーやサファイアなどの鉱脈に巣を作っているらしい。彼等が持ち運んでいる岩や、彼等の体には、しばしばそういう宝石が付着している。また、どこから拾ってくるのか、彼等は祝福されたテレポートスクロールが好きなようで、持ち運んでいることも多い。おかげで蟻の穴は結構な稼ぎになるのだ。
 それにしても、蟻達はあのアイテムを何処に持っていくのだろう。ひょっとしたら、何処かに倉庫のような場所があって、たくさん溜まっているのかもしれない。いや、それよりも、ひょっとしたら女王蟻はスクロールや宝石を食べているのかもしれない。それなら納得がいく。女王のために、蟻達は必死でそれらの”好物”を運んでいるのではないだろうか。



 話せる島の洞窟へ。ここにはスケルトンが大量に出る場所があるという。未だ手に入っていないスケルトンの頭蓋骨を入手するため、洞窟へ入ることにした。
 この洞窟の地下2Fには犬を連れていけない。途中に特殊なテレポートがあるのだけど、そのテレポートで犬と離ればなれになってしまうのだ。僕らが普段使っているものとは別種のもののようだ。僕らが使うテレポートなら、どんなに離れていても、たとえ瀕死であっても、犬は一緒に飛んでくれるのに。犬が守ってくれないとなると僕は無防備だ。とても洞窟に入る勇気はなかった。
 そんな訳で今まで敬遠していたのだが、今はサモンモンスターがある。ヒューイやルーパスの代わりに僕の手伝いをしてくれるのは何か。本当なら選べれば良いのだけど、そういう訳にもいかないらしい。この魔法では召還するモンスターを選択することは出来ない。今の自分に扱えるものが自動的に決まるのだ。僕の場合はリザードマンだった。動きが遅くて今ひとつ頼りないけど、きっと役に立ってくれるだろう。

 何度も休みながら先へ進む。洞窟がどれぐらいの広さなのか僕には分からない。もちろん道筋も。大まかな形は事前に聞いて知っているのだけど、恐らく迷いながら行くことになるだろう。目的地にたどり着けるのか、あるいは着いたとしても、どれだけ時間が掛かるのか分からない。長旅を覚悟しなければならない。消費物である薬を温存する必要があるのだ。

 古い遺跡らしき地下の建造物は、狭くうねった通路が続く。所々にあったと思われる扉はすでに朽ち果てている。事前に調べておいた道順を頼りに先へと進むが、あまりに複雑ですぐに迷ってしまう。一度迷えば、元の場所に戻ることも難しい。おかげであっちへ行ったり、こっちへ行ったりと、随分遠回りをしてしまった。連れているリザードマンは足が遅く、しばしば追いついてくるまで待たなくてはならない。その間にグールなどが現れてぎょっとする場面もあった。この狭い場所で数匹のグールに囲まれでもすれば、大変なことだ。
 途中、一度のテレポートを経て、遂に地下2階への階段を見つけた。意を決して地下2階への階段を下りる。この先にはどんな迷路が待っているのだろう。
 降りた先はとても開けた場所だった。今までの細い通路が嘘のようだ。しかも所々に明かりもある。この地下2階は、この遺跡のいわば心臓部だ。まだ遺跡に施された魔法の力が生きているようだ。
 2階は、大きな部屋が扉で繋がっているような形をしている。とても歩きやすい。扉もまだ動く。見通しも良いのですいすい進んだり、ゆっくり休むことが出来る。自分のいる場所、通った場所も覚えやすい。だが僕にとって見通しが良いということは、敵にも見通しが良いということだ。しばしば、部屋中からアンデット達が集まってきた。スケルトン、スパルトイ、グール、他には弓を持ったスケルトンや、やけに足の速い奴までいる。気を抜いていると、それらがドッと押し寄せるのだ。動きの遅いリザードマンではなかなか対応できない。結局、集まった奴らに対してファイアーボールを連発して切り抜けることになる。
 そんな戦いをしていれば魔法がすぐに尽きる。途中、何度も休むことになった。ここで役に立つのが青色の薬だ。気分がスッとして、魔法が早く回復してくれる。

 かなり進んだ所で、扉に文字が掘ってあった。どうやらこの先には何者かが封印されているらしい。封印者はグンター。そう言えば、この島の偉人として名前をよく聞いた人だ。そして封印された者。その名を聞いて僕は震えた。――バフォメット。邪悪なる主だ。扉には、もしバフォメットを倒したければ扉を開けるがよい、しかし失敗するだろう、と書いてあった。冒険者にとっては挑戦的な言葉だ。けれど僕はきびすを返した。僕などが近づけば、あっという間にやられてしまう。まだまだ僕は弱過ぎる。

 その扉の近くに、またしてもテレポートする場所があった。すでに周りは行き尽くしていて、そこ以外に行く場所がない。僕は何気なくテレポートに乗った。行き着いた先は、ただっ広い部屋だ。何もない。扉が一つあったが、僕には開けられなかった。カギが掛かっているようだ。
 僕はゆっくりと辺りを見回し、ふと気づいた。リザードマンがいないのだ。テレポートで置いてきてしまったらしい。僕はまたテレポートに乗って戻った。リザードマンは大人しく待っていた。僕は、一度リザードマンの召還を解くと、再びテレポートで飛んだ。
 広場に戻って安全を確認した後、僕はリザードマンを召還しようとした。ところが、発動したつもりの魔法が力を発しない。リザードマンも召還されない。不思議に思った僕はもう一度魔法を使った。やっぱり発動しない。僕はハッとした。慌てて荷物をひっくり返し、呆然とした。やっぱりだ。魔力の石がもう無かった。
 召還魔法であるサモンモンスターには、魔力の石が必要だ。僕は何度もテレポートがあるとは思っていなかったので、魔力の石の予備を少ししか持ってきていなかったのだ。なんてこった。これでもうリザードマンさえ呼び出すことが出来ない。仕方ないから村に戻ろう。

 村へ帰還する巻物を出した僕は、そこで手を止めた。辺りには誰も居ない。怖いほど静かだ。歩き出せば、きっと恐ろしい怪物達が現れるだろう。ここを僕のような弱いウィザードが一人で歩くのは危険だ。村に帰って出直した方が絶対にいい。でも僕は、なぜか村に帰る気になれなかった。
 僕は荷物を確認した。これまで温存してきたので、回復アイテムはたくさん残っている。これならしばらくは大丈夫だ。荷物を減らすために価値の低い戦利品を捨てた。いつもなら犬に持って貰っているが、今回は自分が持てる分しか持って帰れない。それに、荷物が多すぎては、満足に休息を取ることもできない。歩くだけで息が切れてしまう。
 荷物を整理し、僕は遺跡の中を見渡した。明かりの向こうに、暗闇が続いている。さっき通ってきた広い通路だ。そう言えば、まだ確認してない場所があった。この通路の先だ。そこには何があるんだろうか。もしかしたら、扉を開くためのカギとなるものが存在するかもしれない。僕はたった一人、荷物を持って歩き出した。古い遺跡の中を。暗闇は何処までも続いているように見えた。


 一人で歩くのは久しぶりだ。もちろん、こんな危険な場所に一人で挑戦するのは初めてだ。歩くだけで鼓動が早くなった。
 意外にも敵が出てこない。僕は長い通路の端まで、難なく辿り着いた。その先は扉を通り、少しばかりうねった道になっているようだ。すると、向こうから何かがやってくるのが見えた。スケルトンか。動きが早いからグールじゃない。明るい場所に出てきたそいつは、僕が予想さえしなかったものだった。ライカンスロープだ。なぜライカンスロープがここに? 疑問に思う余裕さえなく、そいつは襲いかかってきた。僕はたった一人。守ってくれる者はいない。自分の力でコイツをやっつけなければいけないんだ。

 派手に怪我を負いながらも、やっとの思いでライカンスロープを倒した。それも2匹続けて。僕は意外に自分が戦えることに驚いた。けれど安心は出来ない。通路を進むと、今度はライカンスロープとジャイアントスパイダーが一緒になって現れた。ファイアーボールを連発してどうにか退治する。さっき休息を取っておいてよかった。まだまだ魔法が残っていた。
 その後、僕は見覚えのある場所に出た。どうやらぐるりと一周回ってきてしまったようだ。途中、僕では通過できない扉が幾つもあった。やはりその扉を開けなければいけないのか。恐らく何か特別なカギが必要なのだろう。そのカギが何なのか、何処にあるのか、僕にはさっぱり分からない。

 カギを探して洞窟の中を彷徨った。勿論一人だ。何処まで行けるか、僕自身の力を知るためでもある。洞窟を回っているうちに、あの扉の前に戻ってきた。グンターの記した言葉を再び噛み締める。「扉を開くがよい」。いつか、僕もこの扉を開いてみたい。バフォメットとはどんな姿をしているのだろう。どれ程の強さを持った者なのだろう。僕が奴と戦う日は来るのだろうか。

 しばし扉の前で佇んだ後、またカギを求めて洞窟を歩き出した。直後、ジャイアントスパイダーが2匹現れ、僕は必至の応戦。倒しはしたが魔法が尽きたため、村に帰還することにした。まだ薬は残っていたが、この辺りが頃合いだろう。きっとまた挑戦しよう。その時は、あの扉を開けてみたい。



 話せる島で狩りの途中、雲行きが怪しくなった。すぐに雨が降り出す。周りで狩りをしていた人達も、足を止めて空を見た。この空模様は前に見たことがある。誰もが次に起きることを誰もが予感した。その通り、雨はやがて雪に変わった。また一段とアイスクイーンの力が強まっているのか。

 すぐに報せが飛び交った。「塔前に沸いている!」。塔と言えば象牙の塔だ。象牙の塔はオーレンにある。つまりアイスクイーンのお膝元だ。そこで大量の怪物が発生しているというのだ。前のオアシスと同じ状況だ。今度は火の生物ではなく氷の生物だ。
 僕はしばし躊躇したあと、思い切ってオーレンに飛んだ。象牙の塔の村は冒険者でごった返していた。みな怪物を退治するために、各地から集まってきた強者に違いない。足早に村を出ていく彼等と一緒に、僕も塔へと向かった。

 塔の前では、今まさに戦闘が終わろうとしている所だった。大量のイエティが倒れている。もう終わったのか? と思って見ていると、誰も帰る気配がない。それどころか人は増えている。みんな、まだこれから大量のモンスターが出現すると思っているのだ。
 みんなの考えは外れてはいなかった。すぐに次のモンスターが出現したのだ。そのわき出る瞬間を、僕は始めて見た。噂では、まるでアルティメットバトルのようだと誰かが言っているのを聞いたが、まさにその通りだった。なんの前触れもなく、突然そこに、大量のモンスターがわき出るのだ。しかも十体とかではない。もっと多い。その場がモンスターで埋め尽くされるほどだ。僕のすぐ側にもアイスゴーレムが多量に出現した。僕は躊躇した。これだけのモンスターに一度に襲いかかられたらどうなるだろう。怖くて手を出せなかった。でもそんな心配は不要だった。ここにいる大勢の冒険者達が、モンスターを倒すために集まっているのだ。僕が躊躇した間に、周りから一斉に魔法が打ち込まれ、ナイト達はモンスターの集団に向かって飛び込んでいった。彼等の勇猛な姿に勇気づけられ、僕も遅蒔きながらファイアーボールで参戦。ヒューイとルーパスはそれを合図に、モンスターの集団へと飛び込んだ。
 モンスターは誰かを狙って歩き回る。だから自分の近く留まっている訳ではない。ふと気づくと、ヒューイとルーパスが居なくなっていた。モンスターを追いかけていったのだ。僕は慌てて二匹を探した。が、見つからない。ひょっとして何処かで倒れているのか? 心配しながらウロウロしていると、二匹はゆっくりと戻ってきた。どうやら怪物は無事に倒されたようだ。二匹も無事だった。
 これだけの集団で戦うのだ。案外平気なものなんだな、と僕はほっとした。これなら僕でも戦えそうだ。モンスターに囲まれることだけに気を付けていれば。

 それから数度、モンスターの出現があったが、全て退治された。本当にあっという間だ。ぼやぼやしていると戦いに参加することも出来ないぐらいだ。
 そして一段落ついたかと思ったとき、また雨が降り始めた。何か始まるかもしれない。僕はそう予感した。けれどその雨は雪にはならなかった。やがて太陽も顔を見せる。どうやら終わったようだ。早々と悟った人達が、足早に帰路に着く。次第に静けさが戻ってきた。僕はまだ興奮さめやらず、しばし塔の前で空を見ていた。

 象牙の塔の村に戻った僕は、ついでに村の北にある山に行ってみた。水晶の洞窟がある山だ。でも水晶の洞窟には行かず、その手前に出てくるイエティなどを退治するのが目的だ。そのぐらいでないと僕には荷が重い。その場所なら広くて逃げ回る場所もあるし、敵の数もそんなに出ないのだ。
 しばらく雪面を歩くと広い谷に出た。谷を登っていくと、同じく狩りをしているエルフの女性がいた。彼女も同じように、この辺りに出てくる獲物を狩っているのだろう。僕たちはお互いに、距離を置きながら狩りをした。サーベルタイガー、イエティ、アイスゴーレムなど。
 狩りをしてしばらく経った頃、イエティが2体出てきた。退治は出来るが時間がかかる。イエティは撃たれ強いのだ。僕は適度に距離を保ちながら、2体のイエティを犬に攻撃させていた。いつの間にか谷に入り、少し狭くなった。でも危険な程は狭くない。ここでも大丈夫だろう。そう思っていると、谷の反対側からさっきの女エルフが戻ってきた。彼女は慌てているようだ。たびたび振り向き、後ろに向かって必死に弓を撃っている。すぐに理由が分かった。イエティやサーベルタイガーなど、合計5体もの怪物が追ってくるのだ。さすがにそれは辛い。
 彼女は僕を見るなり助けを求めた。が、僕もいま手一杯だ。僕の後ろにはイエティが2体もいるのだ。僕も手一杯なんだ、と言いながら、僕は自分の後ろを指差した。そして僕は目を丸くした。いつの間にかイエティが3体になっていた。僕は咄嗟に走り出そうとした、が、すぐに立ち止まった。エルフを追ってきたイエティ達が目の前に迫っていた。狭い谷間で僕らは挟まれてしまった。
 僕らは、張り出した岩を利用して何とかイエティ達から距離を取り、その間に何とかしようと思った。が、1体倒すのにとにかく時間がかかる。その上、倒しても倒しても敵はやってくる。どこから沸いてくるのか、谷の両側から新手が続々やってくるのだ。僕はパニックになりそうになりながら、ひたすら走り、撃ち、走り、撃ち、と繰り返した。でも敵は増える一方。魔法はどんどん減っていく。ついには敵の数が数えられなくなった。10体以上は軽くいたはずだ。狭い谷の中が怪物達で一杯になっている。途中から、通りかかった人が加勢してくれたのだけど、焼け石に水。倒す怪物の数より、増える数の方が多いのだ。アイアンゴーレムなんていう、硬い硬い化け物まで出てくる始末だ。
 走り回っていた僕は、谷の下の方に人影を見つけた。男エルフとナイトが狩りをしているようだ。僕は助けを呼んだ。僕の声は相手にはきちんと伝わっていたかどうか分からないが、彼等は僕らの様子に気づいた。そしてすぐに雪を掻き分けて谷に入り、怪物退治を手伝ってくれた。加勢してくれたのはエルフ2人にナイト2人。さすがにナイトは強い。一人でイエティを相手にして一歩も引かないのだ。それでも、まだまだ怪物は沸いてくる。なぜこれだけ沸いてくるのか不思議でならない。先程の異変の影響がここにもあるのだろうか。

 途中、危ないことはあったけど、近くにいた人達のおかげで怪物達を退治することが出来た。彼等は軽く挨拶を交わすと、そのまま山を登り始めた。僕は彼等を見送ることはせず、すぐに村に戻った。



 話せる島の洞窟でやられてしまった。相手はグールだ。油断してたかもしれない。グールの爪には毒がある。もちろんそれは僕も承知している。グールとは数え切れないぐらい戦っているのだから。でも、それが油断に繋がったかもしれない。その時、グールが大量に出てきて焦ったのは確かだ。僕は必死にファイアーボールで応戦した。おかげでグールを退治することは出来た。が、僕は目の前のグールを倒すことに熱中するあまり、解毒を怠っていたのだ。いつの間にか僕の体に回った毒で、戦闘が終わった途端、僕は動けなくなった。グールの毒は体がマヒするものだ。僕は指一本動かすことが出来ない。そこへ、新たなグールがやってきた。僕は反撃することもできず、呆気なくグールにやられてしまった。何も出来ずにやられるのは、本当に後味が悪い。こんなことは早く忘れよう。



 バラ姐さんと狩りをした。場所はケントとグルーディオの間にある荒れ地だ。ブラックナイトがいた、あの場所だ。今までブラックナイトには怖くて手を出さなかった。ブラックナイトは必ず8人で捜索をしているのだ。一人を攻撃すれば全員が襲ってくる。それがどれだけ怖いことか。
 ところがバラ姐さんはブラックナイトを見るやいなや、果敢に戦いを挑んだ。一切の躊躇無しだ。僕も慌てて手助けをする。ブラックナイトは水の魔法に弱い。僕は用意していたフローズンクラウドを連発した。すると、ブラックナイトはバタバタと倒れた。僕も怪我を負ったけど、意外にあっさり、という感じだ。もちろん二人で戦っているのが理由だろうけど、こんなに簡単に倒せるものなんだと、僕はすっかり感心してしまった。

 狩りを続けるうち、ブラックナイトを倒すのにも慣れてきた。最初はフローズンクラウドを闇雲に連発していたのだけど、だんだん、相手の様子を見ながら撃てるようになった。余裕が出来てきたんだろう。無駄に魔法を浪費することも無くなった。
 でもそれは油断だったのかもしれない。再びブラックナイトを見つけた時のことだ。まずバラ姐さんが一撃を与え、それを合図にバラ姐さんの連れていた犬がブラックナイトを攻撃した。普通、この状態ではブラックナイトはバラ姐さんを襲おうとする。ところがその時は、朽ちた建物の残骸が邪魔になり、ブラックナイトはバラ姐さんの所にたどり着けなかった。ブラックナイトはどうしたか。バラ姐さんの犬を攻撃し始めたのだ。
 僕は少し焦った。だがチャンスだとも思った。ブラックナイトは狭い場所にすし詰めになっている。魔法の格好の餌食だ。僕はすかさず壁際に接近し、魔法を放った。ところが、それは少しばかり遅かった。バラ姐さんの犬はすでにやられていたのだ。瀕死の犬にはもう用がないとばかり、ブラックナイトは一斉に僕に向かって押し寄せた。当然僕は距離を取ろうとした。だがその時、足に何かがつかえた。僕のすぐ後ろに倒木があったのだ。ブラックナイトのことだけ見ていた僕は、倒木と壁の間に入っていることに気づかなかった。逃げ場を失った僕は、あっという間にブラックナイトに取り囲まれた。慌ててフローズンクラウドを撃つが、到底間に合わない。バラ姐さんもブラックナイトが邪魔で僕に回復を掛けられない。僕は呆気なくやられてそこに倒れた。
 瀕死の僕はうっすらと目を開けて様子を見ていた。僕が倒れたあと、ヒューイとルーパスが必死にブラックナイトと戦っていた。ブラックナイトの攻撃に二匹は必死に堪えた。バラ姐さんの援護があって、ブラックナイトを倒すことが出来た。が、安心するのは早い。バラ姐さんの背後にはジェネラルが迫っていた。ヒューイとルーパスは、すかさずジェネラルに飛び掛かった。姐さんも魔法で応戦。なんとかジェネラルを倒した。僕はそれを最後に見て、そのまま気を失った。

 僕が目を覚ましたとき、戦闘は終わっていた。ブラックナイトも既に片付いている。バラ姐さんが僕を助けてくれたようだ。姐さんと一緒にいたおかげで僕は死なずにすんだ。ヒューイやルーパスも頑張ってくれた。やっぱり、自分の力を過信するのは良くない。戦いでは常に冷静に、周りの状況をよく見ることが必要だ。


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