リネージュ日記
<話せる島での生活>



 ゴロウを狩りに連れ出す回数が激減した。狩りに行ってもさして成果は出ず、深手を負うことも多いため、思ったように訓練が出来ないのだ。リハビリを兼ねた実地訓練中に、また休養の必要な怪我を負うこともあった。やはり向いていないのか。狩るモンスターも危険になり、ゴロウでは荷が重い。すでにルーパスとヒューイを連れていく事がほとんどで、ゴロウは犬小屋で過ごすことが多くなった。



 久しぶりに船に乗り、話せる島を離れる。目指すはケントを越えてギランへ。訓練の為ではなく買い物が目的。プロテクションクロークというマントが作れるらしい。25000アデナぐらいかかるそうだ。高いには高いが、お金はあるし、今後長い間使えそうなので思い切って手に入れることに。

 ギランは広く、相変わらず迷う。地図が無ければ辿り着くだけで大変だ。
 広場では妹子という人が行商をしていた。どこかで聞いたことがある名だ。確かアルティメットバトルで名を馳せている人だったと思う。この町には、こういう有名な人物が普通に歩いている。

 前回は駆け足だったので、今回は少しゆっくりと町見物をする。ここには何でもあり、様々な物が売買されている。邪魔にしかならなかった動物の皮まで売ることが出来るのだ。大した金額にはならないが。しかし困ったことに、それぞれの店で買い取ってくれるものが決まっているので、売りに行くのが非常に面倒だ。
 通りを一回りして、目的の服屋へ。と言っても簡単にはいかず、一度迷って地図を眺めるハメに。確かアリーナの近くだったように思うので、アリーナを目指す。ようやく目指す服屋を見つけた。都会は大変だ。
 が、そこは服を作るだけ。布を買ってくるように言われたが、布屋が分からない。また彷徨うハメに。歩き回ったせいで、ヒューイも腹が減ってきたようだ。ようやく布屋を見つけて布を購入。戻ってプロテクションクロークを作ってもらう。布に4000、クローク作成に2万の、しめて24000アデナ。こんなに高い買い物は初めてだ。これを無くしたら泣けるだろうなぁ。

 買い物を済ませたあと、早々にギランを出発。その日の最終18時の船に間に合わせるためだ。ギランを出たのは15時。薬をつかって全速力で南下する。だが近道しようと深い森を抜けたのが失敗だった。すぐにジャイアントスパイダーに掴まってしまう。しかも2匹。ポーションをつぎ込んで何とか撃退。再び歩き出すと、やはりジャイアントスパイダーに囲まれているエルフを見つける。ありったけの魔法をつぎ込んで手助けをする。その後、疲れ切った体にまたしても薬でムチ打って森を駆け抜ける。ヒューイもついて来れないほどの早さだ。
 船の出るグルーディオに着いたのは16時半。着く早々、ヒューイは空腹を訴えた。それはそうだ、あれだけ走り続けたのだから。おかげで船には余裕で間に合った。が、ウロウロしているうちに道を間違え、結局はギリギリで船に乗り込んだ。

 話せる島の村でクランに入らないかと誘われる。ぼーっとしていたので危うく聞き逃すところだった。が、今回も丁重にお断りする。今は入る気分になれない。必要性も感じないし、むしろ束縛と感じるかもしれない。が、いずれは何処かに所属することを考えた方がいいんだろう。


 倒れた犬を見つめるエルフがいた。犬には首輪が。どうやら処方すべきアイテムを持っておらず、瀕死の犬を助けられないようだ。復活スクロールを渡した。困ったときはお互い様。


 SKTすなわちシルバーナイトタウンで、今の物より軽くて少しいいシールドを作れるらしい。調べてみたところ、今持っているアイテムで十分作れるようだ。更に、今の盾よりも軽いものが作れるようだ。非力な僕にはいいかもしれない。SKTには行ったことがないが、思い切って足を伸ばしてみよう。

 初めて売買をする。買う方ではなく、売る方。いつもは買ってばかりだったら、復活スクロールを欲しいという人がいたので5枚ほど売った。仕入れ値500アデナを600アデナで販売。儲けは些細だが、初めての取引がちょっとワクワクした。この町には復活スクロールは売っていないので、しばしば売買される。
 が、それで時間を取ってしまい、ギリギリ間に合うはずだった船に乗り遅れてしまう。波止場に着いて切符を買ったら、ちょうど船が桟橋を離れたところだった。ケチって歩いて帰ってきたのが不味かったか。次の出発まで4時間待ちである。もう少し急げば良かった……。

 しばらく狩りで時間を潰したあと、今度は幾らか余裕を持って船に乗り込む。やがて古い帆船は波止場を離れた。行き先はグルーディオ。そして目指すはシルバーナイトタウン。海はいつになく穏やかで青く澄んでいた。

 森の中を進む。不意に真っ白な像が現れた。美しい池もある。まるで宮殿の中庭にある噴水のようだ。なんと、これこそがロウフルテンプルだった。ここに魔法書を持ってくれば魔法を覚えることが出来る。残念ながら、僕は魔法書を1つも持ってなかった。
 途中、道を見つける。道に沿って南下すると橋があった。SKTに通じる橋だ。森の中で迷わずに済んだと胸を撫で下ろす。しかしここからが問題だ。もうケントの地図は役に立たない。僕にとって未知の森になる。
 警戒しつつ森を進むと、人が現れた。ナイトだ。狩りをしているようだ。SKTの場所を聞こうと思ったが、あっというまに去ってしまった。
 確か南だったはずだ。そう思って南下を続けると、ガードがいた。間違っていないようだ。すぐに広い道に出た。と思ったら、そこは荒野だった。これはまさか……。僕は入ってはいけない場所に迷い込んでしまったようだ。しかし、これがあるということは、SKTも近いはずだ。用心しつつ、荒野の周りを歩いた。すぐに狩りをする人達に出会い、道も見つけた。東へ道なりに進むと、血の跡も生々しい訓練場があった。SKTだ。

 シルバーナイトタウンというだけあって、ナイトが多い。誰も強そうだ。ヒューイとルーパスを広場の隅で待たせ、一人で町を歩いた。すぐに鍛冶屋を発見。早速シールドとキャップを作ってもらう。

 用事も済んだことだし、さぁ戻ろう。またあの道を歩くのか……。と思ったが、テレポートさせてくれるようだ。ケント城村まで500アデナ。微妙な値段だ。そして、ハイネ都市、ウッドベック村という、まだ行ったことのない場所へも行ける。どうしようか。

 結局、グルーディオに戻ることに。だが今から戻っても船には間に合わない。今日はSKTに滞在することにしよう。

 思い切って夜の狩りに出かけた。SKTに来るときに通った森は僕に丁度いい狩り場らしいのだ。確かに、そんなに強い敵は出てこなかった。
 狩りが順調だったので、いい気になって西の方へ足を伸ばした。このまま歩いてケントまで行けるかもしれない。狩りをしながら海岸沿いを西へ。戦い慣れた敵ばかりだ。意気揚々と狩りを楽しむ。が、油断して大失敗をした。間違ってライカンスロープに手を出してしまった。集まっていたウェアウルフなどが一斉に襲いかかってきて、結局、テレポートで逃げるハメになった。

 西へ西へ。またしてもライカンスロープに囲まれ、テレポートで逃げる。このテレポートという魔法は、危なくなったときに瞬時に飛べるので役に立つのだが、欠点は、飛ぶ先が分からないことだ。今回も飛んだ先は未知の土地だった。地図にも載っていない。途方に暮れるとはこのことだ。
 すぐ近くに川をみつけた。とにかくこれに沿って西へ向かおう。この川はケントに通じているはずだ。朝までにはケントに着けるかもしれない……。
 しばし歩き、ハッとして地図をひっくり返した。今まで見ていたSKTの地図ではなく、ケント城の地図だ。僕のいる場所がバッチリ分かった。テレポートした時、幸運なことにケント城の近くまで飛んでいたのだ。胸を撫で下ろし、このまま川沿いにケントへと向かうことにした。

 ケントを経由して、夜のうちにギランへ向かうことに。ギランで買い物をするのだ。だが途中、狩っていたホブゴブリンにヒューイが襲われ、慌ててテレポートで逃げた。逃げた先はまたしても地図に載っていない場所。仕方なく帰還のスクロールでケントに戻った。つもりだったのだが、なんとそこはSKTだった。振り出しに戻る、である。
 時間はすでに夜中。再びSKTを発つ。橋を渡ったところで、モンスターに追いかけられるウィザードを発見。手助けをする。が、敵があまりに強く、自分まであっという間にやられてしまう。なんてこった。苦心惨憺した分の稼ぎも、ほとんどがパァ。愕然としたが、目が覚めるとそこはケントでもSKTでもなく、なぜかギランだった。目的地に着いたということで、まぁヨシとすることにしよう。とにかく長い一日だった……。


 ギランで餌用の卵を多量に買い付け、溜まったランプメタルを売りさばく。
 せっかくなのでアルティメットバトルを見ようと思ったが、ちょうど競技が終わったところだった。残念。

 大きな十字架の立っている広場でくつろいでいると、以前見かけた妹子氏を見かけた。なんと現在ランキングトップだという。また取引をしているようだ。とても礼儀正しい人だった。

 早朝にギランを発ちグルーディオへ。船を使って話せる島へと戻った。波乱に満ちたSKTへの旅はこうして終わった。世界にはまだまだ未知の土地がたくさんある。次にSKTに行くときにはハイネにまで足を伸ばしてみようか。

 話せる島に戻ると、広場で魔法書を売っている人がいた。ずらりと並べている。欲しかった魔法書もあるようだ。慌てて駆け寄るが、目の前で買われてしまってがっかり。が、まだ在庫があるらしい。早速物色。ファイアーボール、アースジェイル、リムーブカースを手に入れる。しめて5200アデナ。これを持って前に見つけたテンプルに行けば、この魔法が使えるようになるんだな。よしよし。



 スケルトンのべ数十匹に追いかけられる。なぜ「のべ」なのかというと、倒しても倒しても現れるから。最初は3匹だった。こちらの方が足が速い(薬の効果)なので、小屋の周りをぐるぐる周りながら、少しずつ倒そうと思った。自分が小屋を回ると、相手も追いかけてきて回る。犬も一緒に回る。で、距離をとった所で魔法を一発。それを目標に犬は追いかけながら攻撃。つまり向こうからこちらは攻撃できず、こちらは犬で攻撃できるという寸法だ。
 ところが、3匹だと思っていたら、途中から参戦したスケルトンで5匹になる。ようやく2匹倒したかと思うと、また新たなスケルトンがやってくる。どうや小屋の近くからスケルトンが発生しているらしく、倒しても倒しても、ほとんど際限なく新しいスケルトンが現れる。おかげでこちらも延々と小屋を回るハメに。ぐるぐる。ぐるぐる。近くで見ていたウィザードが、溜まりかねたのか、私を追いかけ回すスケルトンの一部に攻撃をしてくれた。そいつはウィザードを襲うために輪を離れる。が、それが倒されるとまた追加され、追加された奴はまた輪に加わってしまう。またしてもぐるぐる。ぐるぐる。無限地獄である。目が回るのが早いか、バターになるのが早いか、って感じだ。おまけに着実にMPは減ってくる。ちょっとミスると、すぐに追いついてきて僕に攻撃してくる。新しい奴が輪に入ろうとするときなど、待ち伏せをしたり、輪を崩したりして、危うく囲まれそうになることもしばしば。どうにか堪えてやり過ごしつつ、退治はヒューイとルーパスに任せる。私はちまちま魔法を打つだけ。しかしあまりの数の多さに、MPも底をつく。遂にMPが尽きようかという時になって、ようやくスケルトンも底をついたらしい。胸を撫で下ろして村に帰還したのだった。
 しかし苦労した割には、さして稼げはしなかった。ただし、あまり手に入らないというボーンピースが3つも手に入ったのは嬉しかった。




 ドレッドスパイダーにやられる。コイツはジャイアントスパイダーより強い。警戒していない訳ではなかったのだが、2匹に挟み撃ちにあっては如何ともし難い。

 またしてもスケルトンにタコ殴りにあう。生きていたのが不思議なくらいだ。夜の狩りは危険だ。でも相当数倒したのも確か。ボーンピースは不作。スケルトンは儲けも少ない。同じ苦労をしても、ホブゴブリンやノール相手なら倍以上は稼げるのに。這々の体で逃げ帰ったところで、夜が明けた。



 すごい。1回の狩りで1万アデナも稼いでしまった。やっぱりあの場所はお金を稼ぐには効率がいい。ホブゴブリンやノールがいっぱいいるのだ。でも倒すべきはスケルトンなんだよな。頭蓋骨を手に入れないと。

 使いもしない、使い道も分からないミスリルの原石が100個を超えてしまった。ノールが落としていくのだ。これ、売ったらお金になるのかな。でも売るにしても、何処で売ればいいんだ?

 ランプメタルを250アデナで買い取っている人がいた。ギランでは300で買ってくれる人もいるのだが……。そうか、ここで250で買い取り、ギランで300で売れば儲かるのか。彼等は儲けようとしているのか、それともランプメタルを使って防具を作るつもりなのか。


 五代雄介という名のナイトに会う。これから必要そうな魔法書を安く売ってくれた。彼もまたElwing氏の知人だという。Elwing氏は広い人脈を持っているようだ。

 魔法書から魔法を修得するために、テンプルへと向かうことにした。まずは船で海を渡る。波止場に行くと、ちょうどグルーディオからの船が着いた所だった。1時間後に、再びこの船がグルーディオへと向かう。

 出発の直前、別れを済ませた。ゴロウはここで人に預けることにした。二度と会えない訳ではないし、これからも時々は一緒に狩りをしようと思うが、ゴロウと長い旅をすることはもう無いだろう。ゴロウは知ってか知らずか、いつもと同じく眠そうな顔で上目遣いをした。その目がとても寂しそうに見えたのは、僕の感傷なのかもしれない。



 ケントから東へ。以前SKTへ向かうときに見つけたテンプルに何事もなく辿り着く。魔法書を読み上げると、頭の中で何かがこだまして、魔法書の力が僕の中に流れ込んできた。これでより強い魔法が使えるようになった。

 テンプルからギランへと向かう途中、オウルベアーに囲まれる。奴らは足は遅いが、力も体力もある。厄介な相手だ。おまけにエルダーインプが魔法攻撃をしかけてくる。しかも集まった全てが僕を追いかけてくるのだ。ヒューイとルーパスが頑張るが、相手の数が多い。森の中を逃げ惑いながら一匹ずつ撃退。長い時間をかけて、ようやく全てのモンスターを退治した時には、魔法は尽きていた。更に、気づくとそこは見知らぬ深い森である。慌てて開いたどの地図にも載っていない。ケントではなく、ギランでもなく、SKTでもない。分からない。
 地図を見ていると、突然スパイダーが襲ってきた。ジャイアントか、ドレッドか。それを確かめるよりも早く、テレポートで逃れた。
 すると、見覚えのある城門の前に出た。これはギランの外門だ。ほっと胸を撫で下ろし、一度ギランで休息を取ることにした。

 ギランをぶらぶらと歩いていたらテレポート屋を見つけた。どうやらギランからでも、ハイネに行けるようだ。他にウェルダン村やケント城へも飛ぶことが出来る。ドラゴンバレーにも行けるが、僕がそんな場所に飛んだら、きっと生きては帰れないだろう。

 夜中、ギランを発ち、狩りがてらSKTへと向かう。途中、川沿いを東へ進んでみた。このままハイネまで歩いていけるかもしれない。好奇心で胸がワクワクした。
 突然、奇妙な生き物が現れた。最初は大きな蛇だと思った。が、蛇の頭があるべき場所に、人間の女性の胴体がくっついているのだ。ハッとした直後、背筋に怖気が襲った。ラミアだ。驚きと恐怖、そして興味もわいた。こんな生物を直に見られるなんて。ラミアの気を逸らしつつ、少しだけ近づこうとすると、ラミアがヒューイに襲いかかった。やばい! 慌てて帰還スクロールを使う。ヒューイは間一髪助かった。
 ほっとしたのも束の間。飛んだ先で最初に目に飛び込んだのは、美しい噴水だった。こんな綺麗な噴水は見たことがない。しばし見取れた後、ふと気づく。そう、見たことがないのだ。ここは一体何処だ!?

 広場の隅に立っていた人に話しかけた。この服装は見たことがある。ひょっとしたらテレポート屋かもしれない。期待通り、彼はテレポート屋だった。僕が近づくと彼は饒舌に誘った。テレポートを使いませんか。ギラン、SKT、ウェルダン村へ移動できますよ。そこでハッとする。
 テレポートで移動できる範囲は限られている。近隣の場所だけだ。即ち、ギラン、SKT、ウェルダン村に近い場所。そして美しい噴水のあるような大きな町。まさか、こここそがハイネなのか? 城門のガードが、それを裏付けてくれた。

 どうやら僕は、あの時使った帰還スクロールによって、あの場所から最も近い町、即ちハイネに飛ばされたようだ。怪我の功名という奴だろうか。
 ハイネは優雅な町だ。建物は豪華で、屋根瓦さえ気品に溢れている。噴水の水は水路を伝い、町のあちこちで美しい池を作っている。さしずめ水の都といった所だろうか。

 さすがにハイネから、ラミアのいるあの森を抜けて帰るのは無理だ。ちょっと高いが、テレポートを使って戻ることにした。ギランまで450アデナ。初めての体験だ。リオルというテレポート屋に頼むと、一瞬でギランに到着した。

 ギランでわずかの休息ののち、夜にも関わらず出発。明日の朝発の船に間に合わせるためだ。途中、荒野でスケルトンを狩る。
 最近、すっかり日が長くなった。夜が明けるのも早い。空が白んできたところで、まだこんな時間かと空を見る。ランタンを消そうと立ち止まると、すぐ近くで戦闘をしていた。どんな様子だろうと見入っていたら、スパルトイが近づいていることに気づかなかった。なんてこった。薬も魔法も万全だったのに、使う間も無かった。呆気なくやられてしまう。ただの油断。大失態だ。

 今日の旅も長かった。まだまだ世界は広く、僕は弱いことを痛感した。悪いことは早く忘れて、さっさと船に乗ってしまおう。
 早朝の乗客は僕一人だった。



 スケルトン狩り。ぐるぐる作戦はすっかり定着している。これなら、時間はかかるが、幾らか安心してスケルトンを退治できる。
 スケルトンに囲まれているウィザードを発見。すかさずヒールをかけて助ける。その後、いつものぐるぐる作戦を決行。
 しばらく回りながら狩りをしていると、向こうから逃げてきたウィザードが居た。彼も数匹のスケルトンに追われている。こちらは4匹。向こうは3匹。彼もやはりスケルトンの頭蓋骨を探しているのだろう。しかし、彼の場合は作戦ではなく、単に追いかけられている様子。助けたいが、さすがに僕も4匹を相手にしながら人助けは出来ない。自分でどうにかしてくれ。
 と思っていたら、彼はテレポートで逃げた。まぁしょうがない。死ぬよりはその方がいいと僕も知っている。が、問題は残されたスケルトン3匹だ。彼らは目標を見失ってしまった。やり場のない殺気はどこを向くか。手近な所にいる人間。即ち僕。げ! と思った時には7匹のスケルトンに追われるハメに。
 何とかぐるぐる作戦で逃げようとするが、実はこの作戦、ひとつ欠点がある。ぐるぐる回っていると、その近くにいるスケルトンが寄ってくるのだ。だからこそ、常にスケルトンを相手に出来て効率がいいのだけど、今のような場合には大変なことになる。気が付くとスケルトンは10匹を超えていた。そんなに相手に出来るか!
 近くにいた人が、「大変ですねー」と声をかけてくれる。が、答える余裕はない。というか見てないで助けて。辛うじて「たす」とだけ声になった。本当は「助けてー」と叫びたかったのだが。彼は僕の言いたいことを理解してくれたようで、一部のスケルトンを引き受けて退治してくれた。全部のスケルトンを退治してからお礼を言ったら、さっき僕がヒールをかけてあげた人だった。困ったときはお互い様なのだ。

 村に帰って装備を点検していると、隣でいきなり叫んだ人がいた。「骨セット13,000アデナで如何ですかー」。慌てて飛びつく。すぐに商談成立。
 骨セットというのは、スケルトンなどが落とす「ボーンピース」つまり骨を集めて作るもので、軽くて硬い防具だ。盾、兜、鎧のセットで着けるとなかなか良いらしい。前から欲しかったのだが、目の前で買われたり、それなりのお値段がしたりして、なかなか手に入らなかった。13,000というのは安いと思う。
 早速着てみた。うん。いい感じだ。見た目はちょっと気持ち悪いけど着心地はいい。軽いのも魅力。おかげでポーションを15個も多く持てるようになった。良い買い物をしたな。
 おかげで集めていたボーンピースがいらなくなってしまった。


 話せる島に冒険者が大挙して押し掛けているようだ。モンスターより冒険者の数の方が多くさえ見える。この様子だと、他の場所も人でいっぱいだろう。狩りにならないので、海を渡ってケントやギランで買い物をしに。溜まったアイテムも売りさばかないと。

 ヒューイが色々と拾ってきてくれるのは嬉しいが、たまに人の物まで持ってきて困る。置いてあるものと落ちているものの区別を付けろと言っても無理か……。

 船の出発時間まで少し間があったので、狩りをする。深く森に入りすぎ、慌てて村に戻る。船に飛び乗って、ようやく、ゴロウに会ってくるのを忘れていたことに気づいた。すまんゴロウ。

 ギランに到着。ちょうどアルティメットバドルが始まるところだったので、ヒューイとルーパスを広場で待たせて観戦することに。Slayn氏は今回も参加している。今日は装備が少し違うようだ。あの炎を纏ったようなオーラがない。
 バトルが始まる直前のこの重苦しい雰囲気。各自戦闘のための準備に余念がない。と、Slayn氏の鎧が光り出した。前に見たときと同じようにオレンジ色のオーラを纏っている。更には剣も輝きだす。そうか、これだったのかと納得した瞬間、バトルが始まった。
 前回と比べてモンスターの減りが遅い。どうやら人間側が劣勢のようだ。Slayn氏も回復ポーションを使う回数が多い。このアルティメットバトルは、人間20人対モンスター多数の戦いで行われる。自分だけが強くてもダメなのだ。人間側で参加している者の各自の強さ、その総計が重要になる。
 最終戦を前にして、Slayn氏も壁際に追いつめられ、遂に倒れた。ボスを前にして決着は付いた。今回はモンスター側の圧倒的な勝利である。


 話せる島。狩りに出たところで、村の南に集まっている人々を見つけた。しばし立ち止まって見てみると、どうやら小話が始まるらしい。トップバッターはロナシィというナイト。汚い下宿の話を一説。「自分の風呂が汚くて毎日銭湯に通っていた友人」には会場から笑いが。他に「コックピットと呼ばれる部屋」をひと語り。最後の「ゴキブリも餓死する部屋」でも会場を沸かせ、喝采とともに夜の森を花火や魔法の光が飛び交った。どうやらこの集会は、「第3回お笑い王座決定戦」のようだ。ロナシィ氏は、前々回の優勝者なのだそうだ。
 次に登壇したのは、シャバディ&カルシキというコンビ。前回優勝者である。題目は「オリムVSカスパ」。所々で笑いをとったが、最後は怒号にも似たツッコミを観客全員からくらう。
 一通り楽しんで、狩りに向かった。だがあまりに人が多い。狩りにならず、仕方なく洞窟へ。前よりも僕たちだって強くなってるから、少しは相手になるだろう。
 洞窟ではスケルトンやゴーレムに囲まれた。広い場所や1対1ならあしらえるのだが、この狭い洞窟内で囲まれると悲惨なことになる。結局逃げ帰るハメになった。でも収穫はあった。最高級ルビーだ。生き残るだけで懸命だったので、もはや誰が落としたのか分からないが、倒したモンスターのどれかが持っていたのだろう。赤い輝きはこの世のものとは思えないほど美しい。


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